高社山をつくる。

随分と更新してなくてすみません。
昨年末にパソコンを新しくしたのですが、
どうもmacの「写真」ソフトがうまく動かず、というのが主な理由です。
どうやら外付けのハードディスクとのつながりが悪いというとこまでわかったのですが、
また出費か!と、でもって買ったら本当に調子良くなるの?と躊躇の日々です。
まぁ、買わなきゃダメよね。

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(工房北側に見える高社山、2月くらい)

さて近況としましては、この夏の暑さにも負けず制作の日々を送っています。
昨年の展覧会終了後すぐに、
私の住んでいる中野市からとても嬉しいお話をいただきました。
中野市の新市庁舎に置く作品の依頼です。

中野市では数年前から若手の美術家を応援するために、
作品を購入する事業を行なっているそうです。
私の展覧会を観てくださった選考委員の方の推薦で、
当初は何か作品をご購入いただけるとの話だったのですが、
『北信五岳まみくとい』がいいですねという話から、
せっかくだから中野市を代表する山である
「高社山(たかやしろ)」をモチーフに新作を作る話にまとまって行きました。

中野市は今年の春に新市庁舎が建ちました。
新市庁舎は中野市産のカラマツを随所に使ったモダンな内装で、
その開かれた空間に置かれることを想定して、できるだけ大きな作品が作りたい!と思い、
制作期間や予算等、検討を重ねていただき、春頃に依頼が決定しました。
作りたいとなっては動かずにはいられないので
昨年末からスケッチやモデル作りを進めていたので、
今はすでに製材から寄木作業に取り掛かる段階まで来ています。

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(縮小して作ったモデルでも大きいですが、実際はさらに大きいです)

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(モデルがこれ以上大きいと、重すぎて図面に書くことができなくなるね)

今回の作品は、初めて個人の方以外に収める作品となることと、
初めての注文作品となるので、色々勝手が違います。
僕が今まで注文は受けませんと言ってやってきたのは、
作品を作る時はいつも新しいことに挑戦したいので、
良い作品ができるかわからないからです。

作品の主体となるのは作家であり、
作家が今できる精一杯の表現と技術で作り上げたものを、
もし気に入ってくださるなら手にしてくださいというのが、自然な気がします。

その作家の作品ならなんでも欲しいと思われるような作家はすごいと思うものの、
作品より作家の存在が大きくなってしまっています。
行き過ぎると制作の過程のスケッチや落書き程度のものにまで
値段をつけてしまったりして、もうそうなると作品を観ているとは言えません。

出来上がる前から作品に値段がつくということが
受け入れられなかったのもそんなわけなんですが、最近少し考え方が変わってきました。
作品を作ることと観客(ファン)がいることは両輪であって、
作品の主体は作家だけではないと感じるようになってきています。

当たり前のことにようやく気付いたか!という感じなんですが、
「北信五岳まみくとい」は飯山市美術館からの作品展示の依頼により、
主な観客である飯山市(長野県)のみなさんに感じてもらうためにと考えました。
観てくださった飯山市のみなさんの反響を聞くと、届いていることがわかりました。
そして、「北信五岳」を知らなかった県外の方にも
ちゃんと届く作品になっていることもわかりました。

「高社山」は中野市民なら知らない人はいませんが、
日本国民からすると知っている人の方が少ないと思います。
今回高社山を多方面から観察し、山に対する信仰や歴史についても調べて、
「高社山」がいかに中野市の成り立ちや現在の暮らしに
深く影響を与えているかを知りました。
おそらく日本中には当地の山を背景に成り立つ暮らしがたくさんあり、
山以外にも海や川や湖を背景に暮らす人々がいて、
あまり知られていない山や川や海岸でもその土地では
「富士山」や「琵琶湖」より重要なのだろうと思います。
この思いを作品にこめられたのなら「高社山」を作ることで、
多くの人に届く作品になるかもしれないと思います。

まぁ、何しろ注文作品というのは、
絶対によい作品にしなきゃならないのが大前提なんで、
プレッシャーが半端ないです。

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牛久自然観察の森。

先週末に茨城県牛久市にある「牛久自然観察の森」に行ってきました。
この日は施設内で育った木から「木のおもちゃ」を作るために、
材料となる木を切り倒すことになりました。

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「牛久自然観察の森」内には針葉樹や広葉樹の様々な樹種の木が育っています。
その中で、施設内の畑の南側で育った山桜の木が大きく育ち、
畑に日陰を作ってしまうことから、今回材料とすることが決定しました。
偶然ではありますが、まだ桜の木で「ベイビーベア」を製作していなかったこと、
山桜の赤みを帯びた優しい色が綺麗であることから、樹種の選定としてもバッチリです。

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写真の「ベイビーベア」は2017年の「もくもくすくすくプレザント」で栗の木(左)から、
2016年のケヤキの木(右)から生まれた木のクマです。

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根元から少し上がったところで二股に別れているので、木の家具の材料には少し細いですが、
木のおもちゃであれば十分な材料になりそうです。

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離れて見上げると、根元の太さのイメージよりも随分高く成長しています。

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切り倒される直前に少し雨が降ってきてしまいました。
いよいよ山桜の命をいただきます。

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まず倒す方向に対しての山桜の前方に「受け口」を入れます。

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次に後ろから「追い口」を入れていき、
畑の空いている場所に確実に倒れるように、ワイヤーをかけて引っ張りながら倒します。

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みしみし…と、音を立ててゆっくりと倒れ始めました。

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倒れる瞬間、目の前で見ているとかなり迫力があります。

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幹の周辺部分が白っぽいのがわかると思います。
「白太」と呼ばれる部分で、材料としてはできるだけ避けたいところです。
材料として使える中心は「赤身」と呼ばれます。

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倒してみると、これだけの枝を一本の幹で支えていることに驚かされます。

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色の濃淡があり、とても綺麗な印象です。

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夕暮れには雨が雪に変わった寒さの中、この山桜の花の芽はもう膨らみ始めていました。
この芽が花びらを散らすことはありませんが・・・。

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チェンソーが挟まっちゃいました。
山桜の木も一矢を報いてきましたね。

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咲かなかった桜に変わって山桜のクマが生まれるならせめてもと、思いたいです。

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さて、牛久自然観察の森は、
環境庁が昭和59年度から5ヶ年間の補助事業として実施した
「身近な自然活用地域整備事業」で整備された施設だそうです。
良好な自然環境である里山としての平地林の保全、
利用者が自然とふれあい親しむことのできる施設として誕生しました。

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2011年の東日本大震災に伴う原発の事故の影響から、
室内でも自然の観察や森に親しむ施設へとリニューアルし、
施設内の水辺の生物を観察できる美しい水槽と、
沢山の木のおもちゃが集まる「木育広場」がつくられました。

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観察の森を案内するネイチャーセンターの機能を残しつつ、
室内でも自然と触れ合える施設に見事に生まれ変わっています。

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全国から選りすぐられた、ここでしか遊べない木のおもちゃも数多くおかれ、
来た甲斐のある場所になっていると思います。

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「take-g」に影山が加わってから、
国産材や県産材を利用したおもちゃを作り、地元に根ざした物作りを進めてきました。
手の届くすぐそこの森に木が余っているのに、
輸入材を使うという木工の矛盾を少しでも変えれないものかと、
できることから少しづつ手探りでやっています。

小さな声でも、とにかくあげてみるものだなと思います。
前々回の僕の個展を牛久自然観察の森の職員の方が見にきてくれて、
「テイクジーズー」を施設のために購入していただきました。
そして、去年の飯山市の展覧会に別の職員の方がきてくれて、
「もくもくすくすくプレゼント」のことを知っていただき、
今回の企画につなげてくださいました。

木のクマになる材料を、立ち木を切り倒すところから関わることは、
影山も僕も当初からイメージしていましたが、そう簡単ではないと思っていました。
美術館での展覧会が開催できた時も思いましたが、
強く願って行動していれば、必ず叶うんだと思います。
まだ始まったばかりの企画ではありますが、
僕らの夢を叶えてくれた牛久自然観察の森の皆さんには心から感謝します!
この山桜は、必ず「美しい」クマに生まれ変わらせますので、ご期待ください!

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木のクマ、色々と。

クリスマスカードのブログから気付けば随分経っていました。
今、木のクマが色々と忙しくなっています。

昨年末は前年に引き続き『もくもくすくすくプレゼント』(詳しくはコチラ)で、
地元の中野市の子供達に50体がプレゼントされました。
今年は茨城県牛久市にある自然観察の森という施設で、
公園内の立ち木から100体(予定数)の木のクマを作るイベントが予定されています。
他の自治体でも「木育」や地元木材の利用の観点から、
地元生まれの赤ちゃんにプレゼントするなどの企画を検討していただいています。

take-gで地道に取り組んできた地域の木で地域の子供を育むという考えが、
少しづつ広がりを見せてきて嬉しい限りの中、続いて嬉しいお声がけをいただいています。
伊勢丹新宿店さんから展示会販売会(2月)の依頼です。
もしかすると継続販売とのことなので、僕らも気合いを入れて試行錯誤しています。
時期的に受験合格や新入学入園のお祝いを想定して、
伊勢丹ならではの見せ方がしたいと考えました。
どうにか行けそうかもと見えてきたのが、
長野県の特産品と組み合わせてみよう!と、いうことで
長野県飯田市の伝統工芸「水引」を利用した「サクラサククマ」ができました。

もともと新築祝いにプレゼントしたいというプレゼント包装を希望のご注文があり、
その時に水引でアレコレ作っていて思いついたのがきっかけです。
お祝いの雰囲気が微笑ましく、メイドイン長野が誇らしく、クマたちも華やいで見えます。

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来週は牛久自然観察の森にクマに生まれ変わる立ち木を決定しに行ってきます。
大きな展覧会を終えられた後、
take-gの取り組みにもより力を入れていきたいと思っていたので、嬉しい今年の出だしです。

そうだ、take-gといえばもうすぐ完成の中野市新市庁舎にカラマツの家具も納品しています。
今年はtake-gもガンガンいきますよ!

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