足利義満は一休を呼ぶと、こう切り出した。
「この屏風の虎が夜な夜な抜け出しては、こそこそ何かしているようなのじゃ。
虎を捕らえてはくれぬかのう」
「お安い御用にございます!」
頭にはちまき、たすき掛け。縄をにぎって構えると、
「捕まえますゆえ、義満さま。屏風の虎を出してくだされ!」
一休がそう言うと…屏風から二匹の虎が飛び出した!
虎はにこりと微笑むと「とんちの名人、一休さん。夜な夜な作ったプレゼント、
今宵一夜で配るゆえ、どうか手伝ってはもらえぬか」
「お安い御用にございます!サンタクロースになり変わり、
今宵のイッキューはサンキューにございます!」
メリー、サンキュー、クリスマス!
さてさて、長引くコロナ禍の中、巣篭もり作家はコツコツと作品を積み上げています。
来年は個展を開いてサンキュー、サンキューと言いあえたならいいですね。
今年のクリスマスカードは一休さんです。
一休というと絵本やアニメの中の架空の人物と思われる方もいるかも知れませんが、
室町時代にいた一休宗純という僧侶がモデルです。
『屏風の虎』のエピソードに出てくる殿様は足利義満とされています。
一休が幼少の頃には義満は太政大臣をしりぞき出家していたので、
イラストではW坊主になっています。
一休は後小松天皇の落胤(隠し子)とされていますので、
義満に呼び出されてとんち勝負をしていたというのも、さもありなんでしょう。
詩人としても知られる一休宗純が残した言葉に
「南無釈迦じゃ 娑婆じゃ 地獄じゃ 苦じゃ楽じゃ どうじゃこうじゃと いうが愚かじゃ」
「釈迦といふ いたづらものが世にいでて おほくの人をまよはするかな」
などなど、一癖も二癖もある詩が多いのだとか。
こりゃ確かに、アニメの一休さんのような子供時代があったのではないかと
想像力が湧きますね。
さて、師匠こと僧侶がいそがしく東西を馳せるのが「師走」です。
サンタがクロウして東西を馳せるのが「クリスマス」。
僧侶や司教のおじいちゃんたちが走りまくる師走がされば、新年がやってくる。
そんな時に読まれただろう一休宗純の詩、
「門松は 冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」
一休宗純も師走はさぞいそがしかったのでしょうね。
世界中のいそがしい皆さんに感謝して、メリー、サンキュー、クリスマス!