『江固二のエコジャポン』第二回
電車に乗り席に座ると、不思議が目に飛び込んできた。
目の前に座っている若者がいろいろと気になるのだ。
帽子のつばが斜めになってしまっているは、
おそらくズッコケ三人組のファンなのだろう。
それは理解できたが、驚くべきはその若者、
耳から糸を出し、小さな四角いもの見つめニヤニヤしているのだ。
二駅我慢したが、抑えられない好奇心に身を委ねた。
「その耳から出てるものは何なんですか?」
思いきった。
「はぁ?何ってアイポッドだけど・・・ちょっと、何よ。」
若者は帽子のつばも直さずに答えた。
「え、ポット?・・・ほぅ、ヘソで茶を沸かす何てなことはいうけれど、
東京の人は耳で茶をねぇ。」
お湯はそのつど必要な量を沸かすほうが、電気ポットを使うよりエコだとは思うが、
耳で沸かせるのであれば越した事はない。
「じゃ、そっちは?何を見てニヤニヤしてるの。」
「ニヤニヤしてないよ失礼だなぁ、これはケータイ。」
あぁ、これがケータイか。
さすがに江固二も聞いたことはあったが、たしか電話じゃなかったと思った。
若者は困惑している江固二に、
メールのことやミクシーやらモバゲーのことなどを教えてくれた。
複雑だけれど全体としては友達ができるもののようだと理解した。
顔も分からない人間を友達と呼ぶのには抵抗を感じたが、
特定の場所に行かなくとも、
手紙すら書かなくても友達ができるなんてエコだなぁと思った。
人間関係までエコマークである。
東京のエコはかなり進んでいるのだ。
江固二はスローなだけじゃだめだと反省し、かぶっていた帽子を少し斜めにした。
つづく。