2014年 一覧

「木の匠たち」展 2014

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みなさまたいへんご無沙汰しております。
個展のおわりのブログからずいぶんと時間が経ってしまいました。
もし、何度かブログをのぞきに来て下さった方がいましたらすみませんでした。
ちょっとというかめちゃくちゃに忙しい日々を送っておりました。
というのも、

「木の匠たち」展 2014
会期:9月5日(金)〜8日(月)
時間:10時〜18時(8日は17時まで)
会場:長野県松本市「蔵シック館」
入場料無料・展示販売

というグループ展が個展後すぐに控えていたのです。
おかげさまで個展が好評のうちに終了しましたので、ということは作品がほぼゼロ、
大慌てで作品を作っておりました。
少し涼しい日が続いているので、はかどりはしますが、
いかんせん時間がなすぎで、大きい作品が数個間に合うかっといったところ。
小さい作品も少しは作って行きたいので、あとちょっとラストスパートです。

さて、「木の匠たち」展 とは何かはホームページ
を見てもらうこととしまして、
僕としてはこの展覧会に強行スケジュールでも参加したい訳がありました。
僕が木の仕事の道を進もうと決めるきっかけの一つになった、
木工家の谷進一郎さんから誘われたからです。
大学3年の時の特別講義に現れたのが谷進一郎さんで、
木の家具への考え方や仕事に対する姿勢に心動かされるものがありました。
その、まぁ憧れの人に誘われて嬉しくない人はいません。
「匠」というには木の仕事に対する月日の浅い僕ではありますが、
匠展メンバーの木の先輩方に胸を借りるつもりというか、
胸をおおいに借りまして参加することとなりました。
もし松本周辺で6月の個展をお見逃しの方はぜひ見に来て下さい。
「木の匠たち」展は作品の販売のある展覧会です。
ちなみに僕の作品の展示内容は、
6月の個展とほぼ同じですが販売可能数は少なめです、すみません。

「木の匠」に自分も加わるにあたり、
木工を始めたころのことや、谷進一郎さんとの出会いのことなどを思い出し、
青かった頃に読んでいた本を引っ張りだして来たり、
少し前に買って読まなくちゃって積んであった本を開いてみたり考えることが多くありました。

「木の匠」と繋げて考えるのであれば、
『木材と文明』(ヨアヒム・ラートカウ著)という本は、
木の仕事をするものにとってなかなかに刺激的です。
例えば出だしからこう、

「木材は、ほかに類例がないような原材料です。太古時代から人間の手先の器用さは、
木材を使った仕事とともに発達してきました。
そうです、木材に親しむことは人間の本来の性質の一つである、といっても過言ではありません。
製品加工原料である木材に取り組むことは、
人間の技能・技術の熟練の歴史における基本的要素であると同様に、
人間身体の歴史の基本的要素なのです。
少し前になりますが、
ニーダーザクセン州のシェーニンゲンで1997年に7本の木製の投げ槍が発見されました。
それは40万年の歳月を重ねたものであり、これまで知られているものの中でも飛び抜けて古い、
世界最古の木製道具です。
その出土品はきわめて目立たないものではありますが、
我々に訴えかける力にはトロイの遺跡で発見されたすべての出土品以上に
センセーショナルなものがあります。
それらは、木材の加工にあたっての手作業の技能を証明するとともに、
想像を絶するような遠い昔に人間が製品加工原料である木材とやり取りしつつ
物の完成を成し遂げることができたさまをはっきりと示しています。」

40万年前の人間がどのような道具で木を削っていたのか興味津々になりつつ、
「木材に取り組むことは、人間の技能・技術の熟練の歴史における基本的要素であると同様に、
人間身体の歴史の基本的要素なのです。」
に目が吸い寄せられます。

「旧石器時代から現代に至るまで、仕事の文化は全体として木材に依存しています。
人間と製品製造原料である木材との間には、常に相関関係がありました。
つまり、手や、筋肉などの、ものを形づくる力は、
木材に取り組むことにより生みだされたのです。
と同時に、木製の道具は、これを用いて作業をした手の痕跡をまとっています。」

たしかに旧石器時代からということであれば、
ごく最近プラスチックに道具の主材を明け渡すまで、
船から馬車からバケツから、ありとあらゆる物が木で作られてきました。
「手や、筋肉などの、ものを形づくる力は、木材に取り組むことにより生みだされたのです」
木工家なら誰しもが感じている、木の仕事と人の体、とくには手の構造との相性のよさ。
木を削る指先から伝わる感触の快感ともいえる心地よさ。
そうして生み出された木の家具や器を受け取る側が感じ取る心地よさは、
よく「木のぬくもり」と表現されます。
「木のぬくもり」という曖昧な表現の正体はおそらくは、
人間と木材との長く深い関係性が、
懐かしさや安心といった感情を呼び起こし「木のぬくもり」という表現になったように思います。

まぁ、何といいましょう、ちょっと大げさかもしれませんが、
「木の匠」とはサルが小枝であり塚をつっついた時から今に至るまでの
木と人間との関係を発展させ次の世代に繫いで行こうという人のことではないかと思います。

継承して行くという意味で、
谷進一郎さんが声をかけてくれたことを僕はとてもうれしく思いました。
大学生の頃、どんな木工をして生きていこうかと考えていた時、
図書館や古本屋で「木」と書いてあればとりあえず手に取っていました。

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それはいっしゅ異様な?本でした。
背表紙には『無尽蔵』という本の名前と「焼く・組む・木工遊具」14号とあります。
木工遊具が気になって手に取ってギョッとしました。
黒い表紙に白い活字が並び、何かを強く主張しています。

「ものの氾濫する現況のなかでなおもつくり続ける人たちが自ら筆をとり
そのいきかたと考えを伝え今を生きるすべての人々が快適な暮らしをするには何をなすべきかを
日常使用するものをとおしてつくり手がともに考える意識を持とうとする場を無尽蔵はつくり
多量廃棄物によるあらゆる公害と量産至上による自然破壊人間疎外を直視し
それに歯止めをかけることによりよい環境と文化を築くための意識改革を読者とともに考えたい」

熱い思いがたぎっているのだとわかります。
そして裏表紙に目をやると、2度目のギョッ。
昭和56年3月10日発行とあります。
西暦で1981年ですから僕が3歳の時です。
この本を手にしたのが大学3年のときですから、ちょうど2000年だったと思います。
世の中ではダイオキシン問題が騒がれ、温暖化だエコだと煽る一方で、
同時に大量生産の衣料メーカーのフリースが何千万枚売れたというニュースが流れ
デフレ時代の成功例としてもてはやされるという、アンビバレントな時代。
自分の生き方を見つめる若者には、
そこに自分のやることがある気がして、木工と手仕事に惹かれていきました。
何か自分は新しい生き方を模索し見つけ出せそうな気がしていた時に、
この表紙は強烈すぎました。
自分の生まれた時既に、
僕が見つけた(と思った)生き方を実践し、地道に歩まれている方達がいたのです。
何が衝撃って、約20年前の状況と今の問題が表面的には何も変わっていないように見えること、
いや悪化さえしているということ。
中を読み進め、次の号次の号と読んでいけばいく程、
こんな本があり、そこに登場する幾人もの若い工芸家が活動しても
「現況」を変えていくことは容易ではないのだと知ることができました。

また14号にもどり若い木工作家の座談会をじっくり読んでいると、3度目のギョッ。
ギョッは失礼なのですが、文章のリズムというヤツでして、
若い木工作家の一人に何故か見覚えがあるのです。
20年も前の本だし、知っている訳がないと思えば、
人物紹介に谷進一郎と書かれているではないですか、これには驚きました。
少し前に特別講義でお話を聴いた谷進一郎さんの若き日の写真、めちゃ若い。
プロフィールによればこの時34歳なのだから、
今の僕と同い年くらいと考えると、座談会の内容がレベルが高くて驚きます。
ちなみに、この座談会には最近人間国宝になった須田賢司さんや
オークヴィレッジの稲本正さんなどが参加しています。
座談会に参加している方みなさん木工を志す者の憧れの人たちです。

さて、若き日の僕が読んだ若き日の谷進一郎さんの言葉でこのブログはしめたいと思います。
「僕らが作った物を使ってくれる人や、同じように作っている人でもあり、
その出会いが楽しみになっている。今木工やっているのは、その辺の喜びがあるからでしょう。
この仕事のおかげで、こんな人に会えたっていうね。これからもそれを求めています。」
僕も谷さんに会えました。
ありがとうございます。

ぜひ皆さんも匠たちに出会いに、「木の匠たち」展 2014にお越し下さい!

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ありがとうございました。

あっとゆう間の9日間、ほんとに楽しい9日間でした。
緊張から解放され、お土産にいただいたワインで乾杯してから、
たしか娘を寝かしつけていたような気がしたら次の日の朝。
少し残っていた個展の後片付けをしたり、ブログ用の会場写真を撮ったりと、
のらりくらりとやっていると、
見過ごした友人がやって来たので、ノンアルコールビールで乾杯。
急激な緊張から緩和はあまり体によくないのか、
膝だの腰だのが痛みだしました。
まぁ、温泉だろうねってことで、ポンポコの湯へ行ってリラックス。
おおこれが何かに追われてない日々というヤツかと、久々です。

影山のアパートをのぞくと、彼は障子を張り替えていました。
破れているのがずっと気になっていたらしく、ようやく直せると、せっせ、せっせ。
働き者な男です。

終ったんだなと、実感しました。
たくさんの人が来てくれました。
知っている顔が、初めての顔が、じっくりと作品を観ていってくれました。
たくさんの人が作品を連れて帰ってくれました。
ありがとうございました。
ほんとにいい個展になりました。

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正直に話すと、今回の個展は心配なところが多くありました。
家具などの新しい試みがカタチになるのか。
前回の個展から2年半もの時間を頂いてしまって、
「え、中川岳二?だれだっけ?」とならないだろうか。
展覧会の情報が前回に比べメディアであまり扱ってもらえなかったりと。
(北信ローカルさん、信濃毎日新聞さん、日和さん、ありがとうございました。)
お客さん来てくれるだろうか?
作品の制作が大詰めになると、不安が見え隠れしだしました。

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そこから、前回のブログにつながるので、
初日の一番乗りの方が仏様に見えたとか、見えなかったとか。
開場の時間が近づくにつれて、
1人また1人と、知った顔が、初めての顔が、心配ご無用と集まってきてくれました。
ふたを開けてみれば、前回を上回る人達が集まってくれていたと思います。
ほんと救われました。
ありがとうございました。

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初日でほぼ満足のいく結果となったこともあり、
これは初日に来る方が増える傾向なのだろうと理解していました。
実際そうではあったのだけれど、
最終日まで、人が途切れることがなかったのも驚きでした。
とくに最終日は大忙しで、スタッフ皆、昼食をとりはぐれる程でした。

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最終日におもしろい出来事がありました。
オーストラリアから来たというご夫婦が、とても興味深く作品を見てくれていました。
「作っているのは君か?」的なことをいって話しかけてくれたのだけれど、
僕はサッパリ英語がわからない。
初日にも2組外国の方がいたのだけれど、日本語が話せる方だったので問題なかった。
「どうやって作るのか?どれくらいの日数がかかるのか?」的なことを聞いてくるのだけれど、
どうしようもない。
でも、会場にたくさんの人が来てくれているというのはすごいもので、
「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」的なのりで、
英語が話せる人がいるものなんですね。
しかも話せるどころか、超堪能レベルで、全て通訳してくれて、
作品購入のやり取りまでしてくれました。
彼には感謝の言葉しかありません。
しかもですよ、2人はオーストラリアからこの展覧会のためにしか来ていないので、
これで帰ると聞いた彼は「スノーモンキー」が見れる地獄谷野猿公苑まで
2人を連れて行ってくれたようでした。
素晴らしいことだと思います。
作品を作ること以上の何かができたような気がして、とても嬉しい出来事でした。
なにしろ彼に、ありがとう!

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前回、僕が中野で作品展をやろうと決めた時に思っていたのは、
グローバルとローカルのことでした。
8年前にイギリスやデンマークを旅した時や、
4年前にフィンランドに行った時に思ったことなのですが、
とくにはお土産を買おうとしたとき、そこでしか手に入らないものがないということ。
もちろん観光地での散策や食事などの体験はそこでしか得られないものなのだけれど、
いわゆるショッピング街を歩いていても、東京にない店がない、売っていないものがない。
お土産もの屋さんに立ち寄っても、現地の言葉で書かれたパッケージというだけで、
ここで買う理由が見つからない。
僕がイギリスで買ったのは道ばたで女性が描いていた風景画が1つ。
それくらいしか、ここでしか得られないものがないような気がしたのでした。
お土産屋で見たあれや、ショッピング街で見たそれは、いざとなればネットでも買える。
グローバル化の成せる技。
インターネットと高速流通網でポッチと購入、便利です。

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そこに行く意味、そこに行く訳。
それになることが僕の目標なんじゃないかと、大げさにも思ってみました。
僕のことをきっかけにある人が移動する。
その道すがら思わぬものに出会うかもしれない。
僕の作品以上のものに出会うことだってあるに違いない。
最高じゃないですか。
グローバルとローカルの間で人々が出会い、文化が出会う。
まぁ、大げさなんですけど、昔からそこに新しい文化が生まれるわけですよね。
前回から今回の個展へとずいぶん時間はかかってしまったけれど、
自分の目標に少しでもにじり寄れた気がします。

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個展が無事終了し、どうやらまた作家活動が続けられそうです。
目標を持つのは僕のかってだけれども、それを応援してくれる方がいればこそです。
作品を見に来て下さったみなさまに、心から感謝いたします。
ありがとうございました。

以下連絡事項です。
大きな作品をお買い上げくださいましたみなさま、
遅くとも、来週頭には発送しますので、今しばらくお待ちくださいませ。
お急ぎの方はすみませんがご連絡ください。
メールで展覧会の感想をお寄せいただいたみなさま、
順次返信いたしますので、しばらくお待ちくださいませ。
ニヤニヤしながら読ませてもらっております。
ありがとうございました。

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ありがとうございました!

今、私は酔っております。
最高の祝杯を、最高の仲間たちと、
最高の初日の余韻とともに、味わったところなのです。
もう、ほんとよかった。
何もかもよかったと思います。

この日のために積み上げてきたものを、
この日を待ち望んで下さっていた方ととともにあることができる。
最高の贅沢だと思います。
僕は幸せ者だと思います。

昨夜寝るのが遅くなり、
起きれるかなと心配しながらかけた目覚まし時計より早く目覚めた僕は、
看板を立てるため工房にいくと驚きました。
まだ5時です。
いや5時前です。
朝の散歩には早すぎる、朝の散歩にはオシャレすぎる、
この辺りでは見慣れぬ男性が一人、ニョラニョラと現れました。
そのあまりにも有り難いお姿に、手を合わせそうになって気がつきました。
一番乗りのお客様であると。
お客様は神様である!とか会社の朝礼で社長がいっても、
まぁ半笑いな訳ですけれども、
これはなかなかの説得力であると思いました。

遠くから近くから、朝早くから1時ピッタリにと、
お集まりいただき、ほんとうにありがとうございました!
僕はもう何もかもよかったです。

「まず素材の魅力がある、そして作家の手があり、見る者の感性がある。」
新しいホームページのworksの欄に書いた思いです。
木の魅力と、見にきて下さる方の感性の間に僕がいます。
どちらがかけても僕の居場所はないのだろうと思います。
今日はそのことを実感させてくれる最高の一日でした。
ありがとうございました!

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おかげさまで、作品数はかなり少なくなっております。
ただ、最終日まで全種類の作品を展示しておりますので、
ぜひ足を運んでいただけたらと思います。
1人でも多くの方に見ていただけたら嬉しいです。

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