武蔵野美術大学、特別講義。
先日、母校の武蔵野美術大学で特別講義をしてきました。
十時先生から、工芸工業デザイン学科の木工工房の3年生に
「作家」として活動していくヒントになるような話しをして欲しいと頼まれたのです。
まぁ、難しく考えすぎずに、
僕は「作家」としてどんなことをしてきたかを話せばいいかな、と思いました。
長野に移り住んでから今までの作品写真や、制作風景、工房の様子、展示風景・・・
大学を卒業後14年分の写真データをパソコンやDVDからひっくり返して、
3年生たちに伝えるべきことをピックアップして、
気がつけば500枚近くの写真が集まっていました。
90分の講義に収まるのか?と心配になりつつも
いくつかの作品をコンテナに詰め込んで、東京は小平へと出掛けました。
大学の3年というと進路のことが頭をよぎるころですね。
就職して「デザイナー」になるか、
自分の手でものを作りつづける「作家」になるか。
大まかに分ければ工芸工業デザイン学科の生徒の進路はこの2択かなと思います。
どのような道に進むにしろ、
木を実際に削りながら学んだ経験を、社会で役立てて欲しいです。
木工専攻の3年生は多いらしく、
講義をする部屋に入ると、たくさんの生徒がいて驚きました。
国産の針葉樹で取り組んでいる家具の話しもしました。
生徒たちの中で1人でもいいので、針葉樹の問題に取り組んでいって欲しいです。
いくつか作品を持っていって、実際に手にしてもらいました。
木工作家にとって作品は商品の側面もあるので、
受け手のことを考え、こだわりや仕上がりも自己満足だけではだめ、
バランスを持って作って行くことなどを話しました。
僕は木のおもちゃや置き物を作って作家をやって来ました。
一般的に平面的であった寄木や象嵌の表現を立体的に考え、
木の表現の世界を少し押し広げて来たように思っています。
今の生徒たちはきっと
僕には思いもよらない木の表現を生み出して行ってくれるだろうと思います。
質疑応答などからも、生徒たちの真剣さが伝わってきました。
後輩たちの将来が楽しみです!
午後は2年生を中心に講義をしました。
講義に使用したスライド写真の最初は工房北側からの中野市の風景です。
地方出身の生徒も多いので、田舎で活動する利点などもお話ししました。
僕は田舎の工房から日本全国に世界各国に向けて制作しているつもりです。
大げさなようですが、思っていないことは実現できないので、夢は大きく持ちたいです。
さて、武蔵野美術大学の木工工房は
日本で唯一の四年制大学で木工が学べる場所です。
作家活動をしている中で、自分の技術や、表現、ものを見る目に自信を持ってやって来れたのは、
この日本で唯一の工房で学んだ基礎があったからです。
また、海外の木工作家や木の作品を見ていると、
日本の木工の技術は間違いなくトップレベルにあります。
大げさなようですが、
武蔵美の木工工房で学んだ生徒は必然的に世界がステージだと僕は思います。
1人でも多くの後輩たちが木の表現の世界を押し広げ、活躍してくれることを願っています。