これからの「くらし」、これからの「かたち」
先日、武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科の展覧会、
『これからの「くらし」、これからの「かたち」』~クラフトとデザインの総合と未来形~
の搬入展示をしてきました。
後輩たちが手伝いにきてくれて、ちゃくちゃくと会場が出来上がっていきます。
とりあえず並べて会場のバランスを調整している段階。
このテーブルは僕が学生の時に木工専攻の助手をしていた藤井常雄さんの作品。
助手の時の藤井さんはすごく厳しくて、
現代では失われてしまった徒弟制度のような雰囲気が工房内にはありました。
正直いうと僕はその雰囲気に馴染めない部分があったのですが、
卒業後1人で仕事を始めると、その厳しさは生徒を怪我や事故から守るものだと気がつきました。
展示に来ていた藤井さんと久しぶりに会うと、学生の時の関係性がふっと戻ってきて、
久々生徒気分というか、弟子気分というか、木工工房にいた時が懐かしく思い出されました。
『海』と題されるこのテーブルは、
海底から伸びる岩(脚)に支えられた、
海面(天板)に無数の渦がぶつかり合い、
彫り込まれ波打つ木目の表情が、
月の明かりを反射し静かにさざめく波の動きを表現するかのようです。
普段は海と木は遠いところにある存在のように思います。
でも最近森の中によく行くからか、感じました。
木の幹や枝が風にゆっくりっと揺れ、梢や葉がざわめき、木もれ日の落ちる空間が、
この作品のイメージに重なり合うと。
自然の中にある普遍的なる美を抽出した時、
年輪や渦、葉や波のさざめき、岩や老木の力強さ、
幾重にも重なったイメージの総体が1つの作品に宿ってしまうことに気がつきます。
工芸や美術に対する深い洞察と、
造形的才能、
高度な木工技術を合わせ持った作家による傑作中の傑作だと思います。
僕の作品は展示場所を二転三転して、夜にこの辺で落ち着き、僕は少し早く帰らせてもらいました。
この後朝の4時まで展示作業が続いたそうです。
みなさんお疲れさまでした。
工芸工芸デザイン学科ならでは、素材やかたち、デザインや表現が出揃いました。
オープニングパーティーの時に主任教授の十時啓悦先生から、
この展覧会にあてた挨拶があり、とても考え深いものがありました。
武蔵野美術大学が前身である武蔵野美術学校から改称したのが1962年で約50年前。
工芸工業デザインが独立した学科になったのが1974年、約40年前。
その40年史の中から代表的な作家に集まってもらったとのこと。
今さらながら、ことの重大さに気付き身が引き締まる思いでした。
考えてみれば僕も10年以上は作家活動をして来ているわけで、
僅かでも貢献できていればいいなと思いました。
声をかけて下さった先生に恩返しができるように、
今後も真面目に制作に取り組んでいこうと心を新たにしました。
今回の参加者の中には、なぜだか僕が大学にいた時の他の専攻の助手さんや同級生が多くいました。
ちょっとした同窓会のようで懐かしく楽しい会でした。
今後も武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科の先輩や後輩たちの活躍が楽しみと思います。
僕も頑張ります。
看板にしたがうか、ミッドタウンの案内所で聞いてみて下さい。