工芸って何?
前回のブログにつづき、美術と工芸を分つものは何かです。
そのモヤモヤ感の正体があるならば、探してみようということなんですが、
そもそも工芸とは・・・。
みなさんは「工芸って何ですか?」と聞かれたら何と答えるでしょう。
「抹茶茶碗とかの陶器じゃない」「なんか伝統的な手づくりのヤツ」
「漆塗りの御重とか、古い感じの」などでしょうか。
正直よく分かりませんよね。
工芸をしていると自覚している人でも、明確に答えることは難しい。
辞書的には[製造に関わる技芸。美的価値をそなえた実用品をつくること。
陶芸・木工・染色など。「伝統工芸」]とあります。
「実用品」というあたりが美術とは違うようですが、
前回のブログの『工芸の力―21世紀の展望』展に並んだ作品など
実用のない工芸品はもちろんありますし、
実用的な美術作品というのも存在するでしょう。
あえて今日的な意味を雰囲気で定義しようとすれば、
伝統工芸から日曜クラフトまで、主に自然素材を主に手で制作したものとなるでしょうか。
まぁ、主に手でつくっていれば工芸といえちゃいます、なんでもありです。
言葉というのは厄介なもので、生まれてしまうといろんな意味や勘違いまでを吸い上げて、
どんどん成長して、いつのまにやら「私はいったい何者なのだ?」とか言い出して、
自分探しの旅に出てしまいます。
そんな時は、「お前はお前だろ、現実を見ろよ」などといっても聞く耳は持ちませんので、
その言葉がいつどのようにして生まれたのか知ることで、
無駄な旅から連れ戻すことができるはずです。
工芸とは何か、工芸と美術の関係(区分)について、
樋田豊次郎著『工芸の領分』という本を教科書に考えてみようと思います。
まずはいきなりですが、
「工芸と美術の区別は、近代になって制度的につくられたものである。
両者がすでに江戸時代から区別されていて、それを明治政府が追認したのではなく、
反対に、両者の区別が明治政府による行政的産物だったことは、
近年の近代美術研究が明らかにしたところである。
だいたい明治政府にしても、明治二十年頃までは美術と工芸を一体視して、
その総体を『美術』と呼んできたのだ。
元々日本文化には両者を分け隔てる考えはなかったし、いやそれどころか、
美術や工芸という概念自体がなかったのだから、
時代が近代になったからといって両者を区分することなどできるはずがなかった。」
とのことで、
明治政府による制度的な工芸と美術の区別は、
当初は「見かけ」の区別に過ぎなかったというのです。
え、そうなの?ですが、なんでそんな区別をしなければならなかったのでしょう。
つづきは次回。