木工のスパースター、夢の競演。
昨日、長野県小諸市にある谷進一郎さんの工房にて、
「丹野則雄さんのルーター講習会」がありましたので、行ってきました。
ルーターとは加工機械で、手持ちで使うものから、大きなものまであり、
現在の木工加工ではなくてはならない機械の1つです。
僕は小さな加工が多いので、あまり活用できないと思っていたのですが、
小物加工の名人である丹野さんが
加工はほとんどルーターで行うと聞いて驚きました。
しかも今回は実際に加工の実演をしてくれると聞き、
喜々として、聞きにというか見に行きました。
百聞は一見にしかずといいますが、ほんとためになりました。
丹野さんの作品は、木工関係の人から見ても魔法のような仕事に見えるのだけれど、
その魔法はあまりにシンプルな技術と行程の積み重ねでした。
簡単にいうと「やっぱそうやるしかないっすよね」ということなんだけれど、
それを何百何千と続けることに感服です。
小さい材料を安全に効率よくおさえる道具や、作業の仕方、常人には気付けない微妙なコツまで、
おしみなく教えていただきました。
木工関係の方はぜひ丹野さんの講習会がおちかくであれば、お勧めです!
木工加工の世界観が変わります。
さて、4時間以上にわたる丹野さんの至れり尽くせりのフルコース講習で、
まぁ3日くらいは何も食べなくても大丈夫かなと思えるくらいに、
満腹中枢が刺激されまくっていたところ、
デザートというには強烈な、メインディッシュがアゲインです。
まってました!須田賢司さんの登場です。
須田賢司さんといえば木工芸の人間国宝になったばかりで、超多忙のはず。
その須田さんが参加する「丹野則雄さんのルーター講習会」なのですから、
丹野さんの技術がどれほどのものかということも分かりますね。
谷進一郎さんのはからいで、せっかく須田さんが来るのだから、
丹野さん、須田さんの作品に共通する「箱」について話してもらえることとなったそうです。
須田さんの作品は現代工芸などと題される展覧会に行けば必ず目にする、
観る者、作る者にとって超のつく憧れの作品です。
その作品を間近で、それこそじーっくり、呼吸も忘れてじーっくり。
より感じ取ろうと、にじり寄って、
じっくり見過ぎて眼球が作品にあたる程、じっくり観れました。
ああ、これが穴が空くほど見るという比喩のはじまりと気がつきました。
作品が和紙に書かれた絵であれば、あんまりじっくり見過ぎて、眼球があたり、穴が空くのだと。
丹野さんと須田さんが生み出すのは同じ「箱」という道具ですが、
それぞれの手が、その考えにしたがって生みす作品は対照的です。
昨日谷工房で見た作品はたった2人と言ってしまえば、2人だけの作品だけれど、
木工芸における極点のきらめきが、その間にある幾億もの多様なきらめきを感じさせてくれます。
木工の世界はまだまだ多様な広がりを見せることができると、
希望と勇気をもらえる講習会でした。
講習会の後、参加者の皆さんと、トンカツ屋さんに夕食を食べに行き、
谷さん、丹野さん、須田さんと、木工スーパースターの競演に、
まぁ1週間くらいは何も食べなくても、木工をやれるくらいに満腹、満足となりました。