調律師。


よい作品づくりをする基礎として、木工機械のメンテナンスは欠かせません。
学校では機械の整備までは教えてもらわなかったので、
工房を開いてからほぼ独学で、時に格闘しながら身につけました。
とは言え、少し調子が悪くなり整備の深みにはまると、
半日、1日があっという間に過ぎてしまうことも・・・。
それで良くなればいいけれど、
自分の手ではどうすることも出来ない不調というのも時にはあるわけで、
そんな時は機械屋さんに電話です。
今回の手押鉋盤の不調はかなり難しい調整らしく、
2人がかりで挑んでくれました。
0.01mmの微妙な狂いを、指先の感覚で調整していきます。
鉋の胴(刃物を取り付け回転させる部分)が僅かに傾き、
定盤が僅かにねじれているらしい。
調整の仕方等を横でじっくりと勉強させてもらったけれど、
とてもぼくに正確に直せるような代物じゃない。
機械の調律師の見事な技。
調整の後、試しに削ると、スーーー!ウソみたいにきれいに削れました。
ぼくは1人で制作をしているのだけれど、
実のところ、機械屋さん、研磨屋さん(機械の刃物)、木材屋さんなど、
沢山のプロに支えられて仕事をしています。
とくに機械屋さんから教わったことは数限りないです。
例えば「ほんとうに腕のいい職人というのは、どんな人だと思う?」
と質問されたことがありました。
ぼくはあれこれ考えて「器用で妥協しないとかかな~。」と答えると、
以外と言うかごもっともと言うか、「怪我をしない人だよ。」とのシンプルな答え。
たしかにどんなに器用でも怪我をしてしまえば台無しということもあります。
そんな話をした後に、怪我をしないような道具の作り方や重要性を教えてもらいました。
今のところ怪我なくやって来れているのも、機械屋さんのおかげかもしれません。
木工業者と機械屋さんの結びつきは強いので、機械屋さんは木工業界の情報通でもあります。
機械屋さんによると、今年の長野県内の木工業者はかなり厳しい状況で、
パタパタと潰れているらしい。
そうなるとそれを支える上記のような会社も厳しい訳で、ぼくの仕事も・・・。
ほんとうに1人でつくり出す、独創や個性なんて弱いものです。
創造を生む土壌が消えつつあると思うのは大袈裟なことでしょうか。

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