2008年02月 一覧

『江固二のエコジャポン』第四回

「すみません、決まりですから・・・。」
食べられないとなるとよけいに食べたくなるもので、
江固二はくやしい気持ちになった。
「お気持ちは分かるんですが、
レジのシステムで時間の過ぎたものは会計できないようになっているんです。」
グ~ッ、また江固二の腹がなった。
恥ずかしさでは、かなり絶妙なタイミング。
かわいそうに思ったか、奥にいた別の店員が声をかける。
「たしか明太子ならまだあったと・・・」
「そんなんじゃないんだよ、タラコじゃなきゃ!あぁ~~!」
江固二はまっ赤な顔をしてコンビニを飛び出した。
うっすら泣いているようだった。
東京は冷たい、
そんな風に感じている今の江固二とは対照的に、
冬の柔らかい日差しがポカポカと暖かく、
よく手入れされた公園の木の枝には、鳥が気持ちよさそうにとまっている。
江固二はベンチに座り、持っていたガムを噛んでいた。
あと10分早くコンビニに入り、タラコをゲットしなかった自分を恨んだ。
「あぁ、腹が減った・・・。」
目の前をヘッドバンキングしながら横切るハトを見てつぶやいた。
焼き鳥ならネギ間だよなぁ、などと考えてしまうほどに空腹だ。
ハトを目で追うと、進む先には餌をまくおじさんの姿。
もう餌でもいいから欲しいなぁと、ポカッと口をあけていると、
「おい、兄ちゃんこっちこいよ!」
おじさんが手招きしている。
「どうした青い顔して、これでも食うか。」
おもむろにビニール袋から、おにぎりを出す。
「えっ。あ、ありがとうございます。」
ほんとうに餌をくれるとは思わず、ビックリして見てみると、
なんとタラコのおにぎりである。
江固二の顔に笑顔が戻り、ほほに涙がつたった。
「なんだよ、泣くこたねえだろ。そんなに腹へってんのか?なんなら弁当もやるよ。」
「そんなぁ、わるいですよ、こんなにいただいちゃ。」
と、言いながらも腹のすいた江固二は、鞄からマイ箸を取り出し食べだした。
「気にすんな、今日はミスったとか言って、コンビニの兄ちゃん沢山くれたから。」
江固二はギョッとして消費期限を見た。
弁当は昨日の日付け、おにぎりはどうやらさっきのものらしい。
「なぁに大丈夫だって。この季節なら一週間くらい平気な時だってあるし、
防腐剤の効果が薄れてきてかえって旨いくらいだって。」
「そうなんですかぁ!」
そう言われてみると、すごく美味しい気がしてきた。
タラコのおにぎりもほおばる、めちゃウマである。
そう言えば以前、LEMLの会報でも賞味・消費期限の曖昧さと、
残飯問題について特集されていたことを思い出した。
どういった内容だったかよく思い出せないのだが、
こんなところで実践してい人に出会えるなんて、東京のエコは進んでいると思った。
つづく。

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『江固二のエコジャポン』第三回

「まもなく原宿~、原宿~。」
江固二は八ッとして、若者にお礼を言うと原宿駅で電車を降りた。
今日東京に来たのは他でもない、
江固二が三年前から会員になっている『LEML』こと、
NPO法人『ラブアース・オブ・マイラブ』の東京集会に参加するためなのだ。
長野支部のエコトレッキングや落ちりんご狩り、
諏訪湖エコライブなどの活動には毎回参加してきた江固二だが、
東京で開かれる全国集会は今日が初めてだ。
代々木公園に着くと、既に沢山の人が集まっていた。
江固二は受付を済ませ、予め知らされていた場所に向かう。
午前中は公園を中心に街のごみを拾う
ライフクリーン活動を参加者全員で行うことになっていて、
江固ニは公園の北側を担当するグループだった。
「皆さん!はりきってがんばりましょーーっ。」
リーダーのかけ声で江固二のグループは清掃を始める。
公園の中は思っていたほどゴミはなく、30分もすると江固二の担当場所はキレイになった。
14年ぶりの東京で緊張していのが、ひたいに汗がにじんだらリラックスしてきた。
グ~ッ、気が緩んだせいか江固二の腹がなった。
そういえば慌ただしく家を出てきたので、朝から何も食べていなかったことに気がついた。
江固二はまずいかなぁと思いつつ、近くに見えるコンビニにダッシュ。
ぼくの場所はキレイになったし、
サボリじゃないよと言い訳しながら、おにぎりを選ぶ。
ラッキー!江固二の定番タラコがひとつだけ残っていた。
大好きなタラコとツナを手にレジへ。
店員さんはバーコードをピッとやると、焦った様子で食品表示を確認した。
「す、すみませんお客さま。
こちらタラコの方、消費期限を10分過ぎてしまっていて・・・。
申し訳ありません、商品の入れ替えミスだと思うのですが。」
「そんなぁ、タラコじゃなきゃだめなのに。10分くらい、いいですよ~。」
つづく。

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『江固二のエコジャポン』第二回

電車に乗り席に座ると、不思議が目に飛び込んできた。
目の前に座っている若者がいろいろと気になるのだ。
帽子のつばが斜めになってしまっているは、
おそらくズッコケ三人組のファンなのだろう。
それは理解できたが、驚くべきはその若者、
耳から糸を出し、小さな四角いもの見つめニヤニヤしているのだ。
二駅我慢したが、抑えられない好奇心に身を委ねた。
「その耳から出てるものは何なんですか?」
思いきった。
「はぁ?何ってアイポッドだけど・・・ちょっと、何よ。」
若者は帽子のつばも直さずに答えた。
「え、ポット?・・・ほぅ、ヘソで茶を沸かす何てなことはいうけれど、
東京の人は耳で茶をねぇ。」
お湯はそのつど必要な量を沸かすほうが、電気ポットを使うよりエコだとは思うが、
耳で沸かせるのであれば越した事はない。
「じゃ、そっちは?何を見てニヤニヤしてるの。」
「ニヤニヤしてないよ失礼だなぁ、これはケータイ。」
あぁ、これがケータイか。
さすがに江固二も聞いたことはあったが、たしか電話じゃなかったと思った。
若者は困惑している江固二に、
メールのことやミクシーやらモバゲーのことなどを教えてくれた。
複雑だけれど全体としては友達ができるもののようだと理解した。
顔も分からない人間を友達と呼ぶのには抵抗を感じたが、
特定の場所に行かなくとも、
手紙すら書かなくても友達ができるなんてエコだなぁと思った。
人間関係までエコマークである。
東京のエコはかなり進んでいるのだ。
江固二はスローなだけじゃだめだと反省し、かぶっていた帽子を少し斜めにした。
つづく。

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