『薪技芸』展。

ブログご無沙汰しております。
7月21日から8月1日の日程で開催される『薪技芸』展に参加します。
『薪技芸』は昨年中国で開催された若手工芸家の展覧会です。
日本、中国、韓国など東アジアを中心とした世界中の若々しい作品が集まります。

h28_新技芸_A4_表

第二回は日本の東京芸大の美術館陳列館で開催されます。
僕は武蔵美の課題の見本に製作した「朝ぼらけ」を出品しました。

DSC_6503

学校から借りてきて、工房で小傷を取り再塗装しました。
ちょっとツヤが出すぎた感じですが、これはこれで綺麗です。
夏休みの初め、上野にお出かけの予定のある方がありましたら、覗いてみてください。

h28_新技芸_A4_裏

さてさて、最近の僕はといいますと、
来年の飯山市美術館での展覧会のために、メインになる新作を鋭意製作中です。
1年後とはいえ、なんかソワソワしてすでに追われているような気分。
4月からは母校の武蔵野美術大学で非常勤講師となり、
作家の呼称として「先生」と呼ばれていたのが、ほんとうに「先生」になってしまいました。
とはいえ、月に2回程度の出講なので、作家中心の生活は変わりません。
特別講義で行っていた時とそんなに変わりませんので、
「中川、作家やめるってよ」なんてことはありえませんので、ご心配なく。
製作中に次の講義ではこんな話をしようかなと考えておいて、
前日にちゃっちゃとスライドを作って東京長野を日帰りでやってます。
高速道路で往復も慣れてしまえば、それほど負担ではないし、
講義のスライドがいくつかできると、他の学年の講義にも使えそうとか、
要領がつかめてきた感じです。

大学に戻って分かってきたことは、後輩たちの進路はほとんどが就職だということ。
意外なほどに作家を目指す子が少ないんですね。
僕としては、一人でも多くの生徒が作家に興味を持ってもらい、
作家という進路や、就職後にやっぱ作家になってみるかと思い立った時に、
役立つような講義ができればと思っています。

DSC_5576

そういえば僕が学んだ工芸工業デザイン学科は、今年から新しい校舎になり、
工房も機械室も一新されて、学びの環境が充実しました。
それに合わせて木工工房には新しい講師が4人加わり、講師陣も充実。
4人の中には僕と同期だった内藤くん、僕の時の助手だった藤井さんがいます。
内藤くんは学生の時から頭一つ抜けて才能があり、僕は随分影響を受けました。
彼と一緒に講師をすることになるなんて驚きなんですが、
さらには助手だった藤井さんと一緒というのもビビってしまいます。

DSC_5592

僕は学校を出てすぐに作家を始めたので、
よく作家の経歴にある誰かの工房で働いた「〇〇に師事」みたいなのがないんです。
なので「師匠」と呼べる人としては、武蔵美の十時教授、当時講師にいた先生方となります。
美術系の大学では先生より付き合いが長く、直接に技術を学ぶ人として、助手さんがいて、
藤井さんは作品も技術も圧倒的で、
ちょっと怖かったこともあって「師匠」感がすごかった人です。
一人で作家活動を始めてからも藤井さんが言ってたことを思い出すという場面が幾度もあり、
まぁ、こういう人を「師匠」と呼ぶんだろうねとは思います。

藤井さんは大きな木の固まりをチェーンソーやグラインダーで削り出し、
ノミで仕上げるという独自のスタイルを持っていて、
当時はそれを真似て削り出しの作品を作る生徒が沢山いました。
僕もその一人で、寄木した木の固まりをグラインダーで削るという技法は、
藤井さんが武蔵美の木工工房にいなければ生まれていなかったかもしれません。

学生の時はその環境(人)が有り難いということに気がつかないもので、
当然の技術として真似してるわけですが、
あんなにたくさんの削り出しの作品が作られていた学校や工房は
世界を探しても他になかったと思います。
最近の学生の作品に削り出しの作品が少なくなってきているのは、
藤井さんが学校を離れ、先輩たちが作っていないから後輩も作らなくなっていくんだろうなと。
何も削り出しをしなければならないということを書きたいのではなくて、
技術の伝承や新しい作品を生む土壌というのは、
「人」の集合としての学びの環境なんだということです。

新しい技術で新しい作品を作る人が集まる場では、その「新しさ」は「普通」のことになります。
僕の作品に対して、
よくこんな大きなものが削り出せると驚かれる方がいて、それは木工家の方からも言われます。
でも僕からすると、
僕の作品なんかよりずっと大きな作品を、天賦の造形力でカタチにしちゃう人が、
武蔵美の木工にはいて、それを「普通」のことと思っていたわけです。
まぁ、見よう見まねで作れちゃう武蔵美の生徒もなかなかのものなんでしょうけど、
僕にとっての「師匠」てその環境のことなんだろうと思います。

卒業生としては、
「やっぱ武蔵美の木工てすごいね!」と何処かでいわれると嬉しいと思うのです。
「新しい」ことが「普通」になる環境の一部になれるように頑張りたいです。

What do you think of this post?
  • like (21)

福助、ロボになる。

どうも、お久しぶりの福助やで。
中川があんまりブログ書かんもんやから、わしがまた登場や、お待ちどさん。

おい、中川!、囲碁AI「AlphaGo」がイ・セドル九段に見事勝利したな〜。
わししびれたわ、こら新時代の幕開けやで、
あらゆるところで人工知能やロボが人類を凌駕するかもしれんで。
そういう時代なんや、わしも広義な意味においてはロボなわけやん、
ゆらゆらとお辞儀を繰り返すわけやし。
しかしや、「起き上がり子法師」方式ではいずれ限界がくるで、
時代の波に押し流されてしまう思うねん。

わし、進化したいねん、本気のロボになりたいねん!

ず〜と、ず〜と、お辞儀を繰り返す福助ロボに、作り替えてくれや、作り替えてくれ!
わしは時代に負けたないねん!

DSC_2200

とまぁ、福助が騒いでいますが、ちょっと難しいですよね、福助は木の置物なわけですから。
でも、展覧会などで展示している福助が突如動き出したら、
楽しいだろうな〜とは前々から考えていて、
誰かに装置の制作をお願いできないかななんて思っていたりしました。

福助、ロボになる、という今回の話は一本の電話から、始まりました。
プルルルル、プルルルル、「はい、中川です。」
「あ、中川さん。竹風堂の竹村です。」
「あ〜ぁ、お久しぶりです。個展の時はありがとうございました。」
「あの寄木の福助さんですがね、押してやるとお辞儀をしますね、
あれをずっとお辞儀を繰り返すようにできませんかね?」
「なるほど・・・。」
「何か背中から押してやるカラクリを作れませんか?」
「う〜〜んと、背中からだとカラクリが見えてしまうので、
下から押し上げるような感じが、パッと浮かびました。」
「そうですね、台のようなものがよいかもしれませんね。」
「わかりました。考えてみますので、しばらく時間をください。」

とまぁ、引き受けたのはいいのですが、本当にそんなことが可能でしょうか?
まず一人では無理かもと思い、大学の後輩のカラクリが得意な藤本くんに連絡。
略図を書いてメールすると、モーターのことなど親切に教えてくれました。
でも藤本くんの教えてくれたモーターでは力が弱く、福助が持ち上がりそうにありません。
これは一から勉強するしかないと覚悟を決めます。

疑問や知らないことがある時、助けてくれる凄い場所があるんですけど、みなさんご存知ですか?
え、ご存知ない。
図書館ですよ。
図書館て、やっぱ凄いですね〜、人類の英知の集積です。
「動力」「歯車」「モーター」どんなワードにも、ずらり専門書が用意されています。
しかも「歯車」だけで何冊も。
歯車なんて作ったことなかったんですけど、仕組みがわかるとはまりますね、面白いです。

DSC_2029

DSC_2068

特大福助の揺れている時間が1分から最長で1分半です。
ですから、福助を押し上げる装置が1分半ぐらいのインターバルで、上下すればよいわけです。

DSC_2038

ただ、福助を押し上げる棒は、福助を押し上げた後、すぐに下がらないと、
揺れ戻ってくる福助にぶつかってしまいます。
さて、どんな装置が考えられるでしょうか?

DSC_2060

市販のモーターで最も遅い速度のもので、一分間に4回転するものがあるとわかりましたので、
歯車を組み合わせて、さらに5ぶんの1から6ぶんの1くらいに減速してやります。
市販のモーターもギアヘッドと呼ばれる場所を開けてみると、
何個も歯車が組み合わされて、減速されていることがわかります。

DSC_2071

DSC_2057

図面通り作れていれば、ちゃんと動くはずですが・・・。
歯車がウォールナット、ホワイトアッシュの寄木になっています。
これは意匠としての意味合いよりも、
木の繊維方向を交差させて張り合わせることで、歯車の歯が折れないようにするためです。

DSC_2171

塗装して、台の下に収めます。

DSC_2157

電源は12Vのアダプターにしました。
スイッチはないので、抜き差しして、オン・オフ、です。

DSC_2173

タァ〜、緊張するわ〜!再びの福助やで。
わしついにロボになるんやなぁ、しかし転げ落ちんやろか、緊張や。

カタ〜〜〜ン!って、鹿おどしか〜〜〜い!
なんか確かにロボなんやけど、ロボなんやけど、なんかレトロやねん。
アダプターが付いてなかったら、「江戸時代後期の作だと思われます」って、
虫眼鏡持ったヒゲのおっちゃんに言われたら「そんなものかなぁ」って納得してしまいそうや。
時代は囲碁AI「AlphaGo」やで、なんか時代の波に押し流されて、
沖ははるか、無人島まで押し流された感あるで。
やめぇ、わしが巨人なんやない、お前らが小人なんや!って、誰がガリバー旅行記やねん。

福助はそう言っていますが、動くものを作ったのが初めてだったので、
作者はけっこう感動しました。

DSC_0090

さて、やってきました隣町の小布施にあります「竹風堂本店」。
作者が満足しているからって、会長が満足してくれるかはわかりません。
台の上の福助なみに緊張します。

奥にある本社で会長やスタッフさんにお披露目、
カタ〜〜〜ン!と威勢よく、お辞儀を決める福助。
一同、笑い。
さすが福助、決める時は決めるやつです、完璧です。

メンテナンスの必要性や、何日も動かした時の耐久性など、今後のことを話しながら、
少し気になっていたモーターの「ジーーーーーィ」という音について、
店頭に置いた場合気になるかもしれませんと話ていたら、
「大丈夫、ショウケースの中に飾るから」とのこと。

ショウケースってどこだろう?と思っていたら、まさかのここでした!

DSC_0109

どこって?、ここです。
まさかの店頭も店頭、まさに店頭です。

DSC_0098

おい、中川・・・。めっちゃ緊張やで、さすがに緊張やで。
背中に民芸の芹沢銈介の「風」に「福」の字や、
会長さん、わしのためにめっちゃ舞台整えてくれてるやん。
こりゃもう、竹風堂に、ど〜〜〜んと福の風を起こさにゃあかんで。
わしのお辞儀とこのおでこで、福の風を舞い上げるで!

DSC_0099

確かに、作者としても緊張します。
ここ長野県小布施町は、北斎、栗菓子、酒蔵などなど、
近年ますます人気の観光スポットになっています。
週末この竹風堂の前の道などは観光客で驚くほど賑わっています。
一人でも多くの人が足を止め、ちょっとでも笑顔になってくれればと、
福助には休まずお辞儀を続けるよう、強く言って聞かせます。

DSC_0101

店長さんと一緒に、セッティング。
電源までの延長コードがないので、後ほど用意するということとなり、
何かあったらすぐ電話をくださいということで、とりあえずの納品完了にホッとしました。

DSC_0106

と、このブログを途中まで書いていた、納品の次の日の朝・・・。
(その時は囲碁AI「AlphaGo」が人類に勝った日で上のネタがタイムリーだったですが。)
プルルルル、プルルルル、「竹風堂の竹村です。どうも福助さんが転んでしまうようで。」

まさかの、福助、店頭で転倒です。

工房ではモーターと歯車の連続運転テストは12時間以上試したのですが、
福助のお辞儀は2時間動かして大丈夫だろうと判断していました。
甘かったと反省し、すぐ小布施へ。

会長と話し合い、あれこれ考えた結果、
安全性を考えて、台に溝を掘る方向で行こうということに。
テストをした福助は工房にあるものを使ったのもよくなかったと思い、
福助ごと家に持ち帰ります。

福助を3体用意してテストを繰り返すと、それぞれに違う癖があることがわかりました。
ほとんど動かない福助もあれば、右方向にまわっていく福助、後ろに下がってくる福助。

竹風堂の福助は右に回りつつ、後ろに僅かづつ下がってしまいます。
回るのは止められるのですが、下がるのについては調整が難しい。
台を少しづつ前方に傾けていくと、
前に滑るのと後ろに下がる力の釣りあう角度を発見できました。
しかし台が完成しているので、
ただ台を傾けるのでは芸がありませんし、見た目にも難があります。

う〜〜〜ん、あっそうか!溝を斜めに掘ればいいんじゃない!
シナプスとシナプスがつながって頭の中で電球が輝く!
古いひらめきイメージの僕の脳みそですが、
まだまだAIには負けていられません。

思いついてしまえば簡単です。
型を作って、ルーターで削っていきます。

DSC03995

DSC_1169

ピタッと欲しい角度が出ました。
夜中の12時間テストを、塗装前、塗装後の2回クリアして、改めて納品です。

DSC_1200

DSC_1201

店頭で1時間ちゃんと動くのを確認させてもらって、
福助の位置をチェックするため目印のシールを貼ったので、
一週間後順調にお辞儀をしていたか確認して、
シールを剥がして晴れて納品とさせてもらうこととしました。
動く作品がはじめてで、問題を出してしまいましたが、
竹風堂が工房の近くのお店であったことは幸運でした。
台を納品した日も、調整して持って行った日も、
僕の出した答えに、竹村会長が目を細めて喜んでくれたことが嬉しかったです。
この楽しさが見てくれた人にも伝わったらいいなと思います。

ちなみに、僕の作品に詳しい人は気になると思うのが直射日光による日焼けです。
竹風堂のこの場所は、北向きな上、西日も当たらないという、願っても無いよい場所です。
小布施に観光の際には、ぜひとも福助がサボっていないか、会いに行ってやってください。
(季節ごとにこの場所の飾りつけは変わってしまうそうで、
本店のどこかにはいるかもしれませんので探してみてください。)

What do you think of this post?
  • like (59)

『新技芸』展、後編。

3日目に予定されていたシンポジウムが2日目に変更されて、
開会式の後「上海工芸美術職業学院」にバスで移動しました。
急な変更は中国ではよくあることだそうです。

DSC_0975
「上海工芸美術職業学院」は3年制の学校で、
日本の専門学校と大学の中間くらいの存在らしいです。

DSC_0976
この学校の今回の展覧会に掛ける意気込みがすごく、
構内にポスターなどが張り巡らされていました。

DSC_0979

DSC_0998
学長や教授陣が参加し、工芸の「伝統と現代の関係」について話し合われました。

DSC_0991
中国語、英語、韓国語、日本語が飛び交うわけですが、どうやって聞いていたかというと、
同時通訳というものを初体験しました。

DSC_1031
学長たちの対談の後は、若い先生たちによる話し合いもありました。
芸大の三神先生も発言しておられましたが、
若い世代の置かれた状況や、自分の経験を織り交ぜながらも、
芸大の立場をはっきりとさせていて、立派なものだなぁと感心しました。

DSC_0954
「上海工芸美術職業学院」の構内見学もしました。
漆の工房周辺です。

DSC_0968
制作中の漆絵ですね。

DSC_0947
陶芸工房周辺。

DSC_0945

DSC_0925
日本の学校教育では見かけない、石の工芸です。

DSC_0937

DSC_0918
校舎の中庭は造園を勉強するところのようです。

DSC_0906
小さな木彫を作る工房。
日本では木工ということなのか、木彫ということなのかわかりません。

DSC_0939
工芸図案を勉強する工房。
図案だけを特化して勉強するというのは、日本でも明治から大正にかけてありましたが、
今はないか、デザインとして勉強しているかでしょうか。

DSC_0870
最先端?のNCルーターもありました。

DSC_0876
かなり小さな刃で繊細に彫っていました。

DSC_0874
大まかに機械で彫った後、手彫りで仕上げるようです。
荒どりが自動でできてしまうというのは楽でしょうね。

シンポジウムが2日目に変更されたため、3日目が突如フリーになり、丸一日観光をしました。

DSC_1424
観光名所のようですが、何処なのかよく分かっていません。

DSC_1394
食べ歩きができ、昼食がなんとなくすんでしまいました。

DSC_1430
そういえば、今回スムーズに観光できたのには、
日本から参加のアメリカ人のマギーさんの存在が大きかったです。
彼女は中国の清華大学にも留学経験があるため、
中国語ができる上、英語はもちろん、日本語もできます。
さらに中国に知り合いも多いので、
この日は中国美術学院の李先生を呼んでくれて、観光地やギャラリーを案内してもらいました。

DSC_1417

DSC_1453
李先生が所属しているギャラリーです。
若い現代美術の作家の展覧会が開かれていました。

DSC_1460 (1)
ギャラリーのオーナーにお茶をご馳走になりました。
小さい湯飲みにどんどん注ぐのが中国式の歓迎だそうです。

DSC_1464
ここは上海の現大美術ギャラリーがたくさん集まっているところ。

DSC_1471
どこまでも奥に続いていくように感じで、
ぜんぜん回りきれていないんじゃないかと思うくらい、ギャラリーばっかりです。

ギャラリーの中は普通は写真ダメなんで、見せられないのが残念ですが、
中国の現代美術すごかったです。
数年前に中国の現代美術作品にアジアで最高額が付いたとか、
作品の質や人気においてもうなぎ登っているのは小耳の挟んではいましたが、
なんとなく体制批判的ニュアンスや、近代的自我の中国的な困難を、
この辺まではセーフ的に描いた作品かなと思っていました。
まぁ好みの問題ですが、
アートなんで分かりやすく体制からの「自由」を表現するというのはいいんだと思います。
不思議だなぁと思うのは、
中国ではアート以外で体制を批判すると、すぐに「自由」がなくなってしまう印象で、
新聞記事で「人権派の弁護士が逮捕」とか見ると、
それは普通の弁護士ではと思ってしまうわけです。
そういえば、アイウェイウェイの作品を東京の森美術館で見たときには、
大変感銘を受けたことがありましたっけ。
アートとはいえ彼のようにセーフティのラインを徐々に下げてやろうという
「ほんもの」の作家は、いつの間にか「自由」を奪われたりします。

さて、何となく型にはめて中国のアートを見ていた僕でしたが、
まさに今の作家、旬はどうかというと、もう少し足元を見ているのかもしれません。
水墨画的な雰囲気の水彩で現代的なモチーフを描く作家や、
オーソドックスな版画作品のようで今の雰囲気をつかみ取る作家、
わかりやすい中国的なモチーフなしに中国を感じさせるローカル性も、
大変好みのものがありました。
おそらく次の世代はようやく体制批判的モチーフなどからも
「自由」になっていくのかもしれません。
刺激は弱くとも上質のアートが生まれてきて、
さらに今のようなアートマーケットが継続するようなことになれば、
中国のアートはいよいよ「本物」の正体を現すかもしれませんね。

1日目に空港から上海の街に向かう途中、建設中の高層マンションが立ち並ぶ様子が見えてきて、
「ここが上海の中心かぁ」なんて寝ぼけていたら、どこまでいってもその景色が続き、
団地のような高層マンションの群れが、延々と続いていくさまに、
大気汚染のモヤモヤも相まって蜃気楼かなぁなんて思いました。
でも、数日間を上海で過ごしその勢いを目の当たりにし、中国の人と触れ合うことで、
もしかして日本のメディアで聞く「中国経済崩壊間近」的な報道って、
日本の願望が強いんじゃないかなと思いました。
そういった危うさがあるのは事実だと思いますし、
マンションが人が住むためだけじゃない理由で、建設が止まらないというのもあるとは思います。
かといって、今回の展示を開こうと動いた中国の先生たちのように、
志を持って自国の文化を高めていこうという人たちは、
すごく現実を見ていて地道に活動されていると思いました。
まぁ、工芸なんで地道にしか、なかなかやりようないんですけど。
どうあれ強い経済力のままに、質の高い文化を持って行くとすると、
芸術分野は花開くでしょうね。

観光している途中に立ち寄った、インテリアショップの家具のデザインがとても優れていました。
日本のように西洋化とともに家具を学んでいったのと違い、
中国はもともと椅子、テーブル文化ですから、当然と言えば当然ですが、
中国らしい造形を持ちながら今の暮らしに会う、
シンプルさとしなやかさを持ったデザインが印象的でした。

中国のすごいところは、つまりこのことだなと。
世界で最も経済的に生産できる工場を持ち、
世界で最も多くの購買力を持った国民が暮らし、
世界の質の高い文化を追い越そうとしている。

これは強いよねと、日本は国土の限界、人口の限界がおのづと、
バブル崩壊から冬の時代に突入しましたが、中国は限界の桁が違うのかも。
環境のことなんかも国土の広さがあるせいで、
まぁどうにかなるか、になってしまうのかもしれません。

4日目の上海空港に送ってもらっている車の窓から、
来た時と同じ高層マンションの群れを見ると、
こんな非現実的な光景が、この国では実体を持ってしまうのかもなぁと、思っていました。

サブーリさんやマギーさん、三神先生と別れ、
長野行きの新幹線に乗ると流れてくるアナウンスが日本語でホッとしました。
新幹線の窓を眺めながら、一緒に行ったメンバーと最初の昼食を取っていた時、
国によって食事のルールや常識って、
いろいろあるよねという話になったことを思い出していました。
「ズズッと音を立てて、すするのは、食事の席でオナラするより恥ずかしい」とか、
宗教上の理由で食べられないものがあるけど?とか。
食事以外でも、僕たちが「よくやった」と親指を立てる、
いわゆる「グーッ!」のジェスチャーは、
イランでは中指を立てるいわゆる「ファックッ、ユー!」の意味なのだそうです。
アメリカ人とイラン人のいるテーブルで、同じサインが真逆の意味だと教わりました。

「常識とは、18才までに得た偏見のコレクションである。」

というアインシュタインの言った言葉があります。
全てのことは、たまたま生まれついた国で、
たまたま誰かが考えて、たまたま常識になっていることなんでしょう。
ただそれが大事でもあるから、
僕たちは「常識」や「伝統」なんていうルールを持ってきて守ろうとします。
でもそれは「偏見」でしかないと思ってみると、急に「自由」になれる。
「伝統」の大事さを理解しながらも、そこから「自由」であろうとする。
グローバルな土俵で、
国も文化も歴史も、「偏見」の積み重ねを超えて、新しい表現が見たいなぁと思いました。
改めて「新技芸」という言葉が好きだ!と思います。
新しい表現はきっと,
僕らが展覧会を通して関わり合って行く中から生まれてくるのだと思うのです。

まぁ、なんと楽しい4日間だったでしょう、
知らないことを知る、疑問に思っていたことが分かる、新しい感性に触れる、
工芸やっててほんとよかったです。
では、これが今年最後のブログになりそうですので、みなさんよいお年を!

What do you think of this post?
  • like (11)