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長女とデート。 | nakagawa takeji

長女とデート。

娘と2人で映画を見に行った。
ほどよく混んだ館内の中程に並んで座れた。
娘が笑えば僕もおもしろくなったし、泣きそうになれば僕もかなしかった。
大声で泣いてしまった時にはヒヤヒヤしたけど、
2時間はあっという間に終ってしまった。
帰り道で感想や印象に残った場面を娘と話し合っていた時、
ふっと不思議な気持ちになった。
高校生の頃、周りの友達に彼女ができ始めて、
どこにデートに行ったなんて話しを聞くようになった。
仲が良かった友達が1人また1人と、学校前の駄菓子屋のベンチから抜けて行くと、
「べつに彼女ができないんじゃなくて、つきあう理由が見つからねーし・・・」などと、
強がりのような本心のようなことを言っていた。
本心というのは、僕は男女が付き合うということがよく分からなかった。
高校生の頃から美術館に行くのが好きで、
ある種マニアックな趣味だったので、友達を誘うこともなく、
1人で出かけるのが普通だった。
1人でいることが基本的に好きで、何か空想したり自問自答したりするのが好きで、
人に合わせるのが苦手だった。
だから男友達よりも理解しあうのが困難そうな女の子と付き合って、
いったい何を話すというの?
いったいどこに出かけるというの?
つきあってどうするの?と思っていた。
そんな僕でも「つきあって欲しい・・」とタイプでないわけでもない女の子から告白されると、
思春期の男子にとって、ことわる理由もまた見つからねーし、とまぁなるわけで。
美術大学を目指す予備校で出会ったのがよかったのだろう。
つきあってどうしたかといえば、
今まで1人で出かけていた場所に女の子が一緒にいるということだった。
帰り道に1人でブツブツ言っていたことを話す相手ができるということだった。
意見が合うこともあれば、合わないこともあるということだった。
自分とは違う見方をする人がいて、その見方を自分の内にも持ち始めるということだった。
「君ならどう思うだろう?君ならなんて言うだろう?」
1人で面白いものを見てしまったとき、一緒にいて欲しかったと思うようになり、
一緒に暮らしはじめた。
1人でいることが好きだった僕は3人になり、
映画の感想を話し合う人がもう1人ふえた。
僕とも妻とも違う見方で娘は映画を見る。
自分とは違う世界の見方を受け入れた先に、また自分とは違う世界の見方が生まれた。
娘とのデートもわるくないと思った。
君たちのおかげで僕の見方はまた豊かになっていく。
自分とは違う見方を自分の内に持つということ。
もし男女が付き合うことや結婚に理由があるならそんなことだろうと思った。
娘と見た『風立ちぬ』は最高に楽しかった。
妻と見たらまた違った見え方がするだろうか。
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